節電の途中過程
一般の投資者にとっては,開示情報に虚偽があることなどの違法行為の発見自体が難しいこと,虚偽記載などによって発生した損害額の立証が困難であるにもかかわらず,損害額を推定する規定が証券取引法19条など,わずかしかないこと,虚偽記載と損害との間の因果関係の立証が困難であることなどがあげられている。
また,損害を受けた投資者が多数であり,その損害額の合計が巨額なものであったとしても,個々の投資者にとってはそれほど多額ではなく,訴訟を起こして賠償責任を追及したのでは,費用と時間が余計にかかってしまうということもあるであろう。
アメリカ合衆国では,多数の者が1つの事項に利害関係を有する場合に,1人または数人が,その集団の全員を訴訟に加えることなく,その集団の代"表者として訴え,または,訴えられうる訴訟手続(集団訴訟,クラスアクション)が,連邦民事訴訟規則によって連邦裁判所で認められており(FRCP・rule23),大多数の州裁判所でも認められている。
この手続によれば,証券取引法違反や独占禁止法違反の行為のように,1人1人の損害額がわすがでも,その合計額が巨額にのぼる場合には,1人1人の損害をまとめ上げて賠償責任を追及する訴訟を起こすことが可能となる。
集団訴訟制度は,直接的には,1つの違法行為により被害を受けた者が多数いるが,その個々人の被害額が少額である場合の被害者を救済する制度であるが,このような場合に,被害者が泣き寝入りすることがないようにするとともに,このような違法行為によって得られた利益を吐き出させるという,社会正義の実現を図る機能も持っている。
近年,わが国では,企業の違法行為や反社会的行為が報道されることが多いが,これら違法行為によって利益をあげている企業が,法令を遵守し社会的責任を全うしている企業を,市場競争において駆逐してしまうようなことがないようにするためにも,集団訴訟制度の導入を,わが国でも検討していくべきではないかと思われる。
以上に説明した有価証券届出制度は,いわゆる企業金融型証券についての開示制度であるが,これとは構造の異なる資産金融型証券についても,同様に適用される。
ただし,前述のように,企業金融型証券と資産金融型証券とでは,開示されるべき内容がまったく異なるため,資産金融型証券の募集・売出をする場合に提出する有価証券届出書による開示内容については,企業金融型証券とは別の内閣府令により規制が行われている。
すなわち,「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」により,「特定有価証券」専用の有価証券届出書を提出するものとされている(証取5条1項,開示府令1条1号柱書,特定証券開示府令10条,証取令3条の4,証取令3条の4第4号に掲げる特定有価証券を定める内閣府令)。
特定証券開示府令10条では,証券の区分ごとに開示内容や開示様式を定めている。
特定有価証券の種類については,継続開示のところで説明した。
開示内容は,特定有価証券の有価証券報告書の内容に,証券情報が付加される(たとえば,外国貸付債権信託受益証券については,特定証券開示府"令10条2号,5号様式)。
なお,「特定有価証券」に関する「目論見書」については,特定有価証券の募集.売出のために相手方に提供される,当該有価証券に係る信託財産などに関する事項の説明が記載された文書と定義されている(証取2条'0項,定義府令9条1号)。
平成12年5月の証券取引法の改正によって,平成13年6月1日から,開示用電子情報処理組織(証取27条の30の2.愛称はEDINET:ElectronicDisclosureforlnvestor'sNETwork)が稼働している。EDINETは,証券取引法に基づくディスクロージャー制度を電子化するものである。
東証のTDnetや日本証券業協会のJDSが,法律の規定には基づかない適時開示情報の提出と公開を電子化するものであるのに対して,EDINETは,証券取引法が義務づけている法定開示書類に関する情報開示の手続を電子化するものである。
EDINETは,証券取引法に基づく有価証券報告書などの法定開示書類の提出と公開を,電子ネットワーク化するシステムである。
EDINETにより,従来,紙媒体によって提出されていた有価証券報告書などの開示書類の提出と公衆縦覧などの一連の手続は電子化される。
具体的には,開示書類の提出会社は,開示書類に記載すべき情報を,インターネットを利用したオンラインで,財務(支)局に提出し,提出された開示情報は,財務(支)局の閲覧室や東京証券取引所のインフォメーションテラスなどに設置されたパソコンのモニター画面によって公衆縦覧に供されるとともに,インターネットを通じて広く一般に無料公開される(http://info、EDInet,go、jp/。
ただし,インターネットで公開される情報は1日遅れになる)。
EDINETの対象となる開示書類は,次の3種類である。
@証券取引法第2章「企業内容等の開示」に係る開示書類。
A同法第2章の2「公開買付けに関する開示」に係る開示書類。
B同法第2章の3「株券等の大量保有の状況に関する開示」に係る開示書類。
EDINETによるこれらの開示書類の提出手続は,「電子開示手続」と「任意電子開示手続」の2種類に分けられる。
いずれの手続も,内閣府の使用に係る電子計算機に備えられたファイルヘの記録がされた時に内閣府に到達したものとみなされる(証取27条の30の3第3項)。
書類提出の際に必ずEDINETを使用しなければならない手続を「電子開示手続」といい,有価証券報告書,半期報告書,臨時報告書,有価証券届出書,発行登録書,発行登録追補書類,公開買付届出書,意見表明報告書,公開買付報告書,公開買付撤回届出書などの提出手続がこれにあたる(証取27条の30の2.27条の30の3第1項)。
これに対して,従来どおり,紙媒体による提出も可能であるとともに,EDINETを使用して提出することも可能な手続を「任意電子開示手続」といい,有価証券通知書,発行登録通知書,大量保有報告書,変更報告書などの提出手続がこれにあたる(証取27条の30の2.27条の30の3第2項)。
なお,EDINETは以下のとおり段階的に実施される(平成12年法96号改正附則5条)。
すでに第2段階まで実施されており,そのうちの「電子開示手続」の対象書類については,本来ならEDINETによる提出が義務づけられるはずだが,平成13年6月1日から平成16年5月31日までの間は,「電子開示手続」の対象書類であっても,EDINETを使用しての提出は任意とされている(平成12年法96号改正附則6条・8条)。
したがって,当該期間内は,従来どおり紙媒体で提出する会社とEDINETを利用する会社が併存することになる。
なお,EDINETにより閲覧できる書類は,EDINETにより提出された会社の書類のみである。
このような会社の書類でも,EDINET使用以前に紙媒体で提出された書類については,紙媒体での閲覧に限られる。
EDINETにより電子化される手続は,行政当局への書類の提出とその公開の手続だけではない。
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